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一人の老人の死 [カヌー]

いつものような東京での徒歩での出勤途中に
天気がよいのかバス停に誰かがおいた椅子に
着物姿の老人が着物のすそをはだけて手を
大の字にして寝ているのがふと目に入った。
最初はそのまま通り過ぎたが、何か不自然な
気がしたので5メートルほど行き過ぎて戻った。
いくら暖かいといっても日陰出の昼寝では気の毒。
間違えば大きなおせっかい。

花屋がそこにあったので店の人に老人のことを聞いたが、
店の中からは外が見えないのと昼時で忙しいようで
気が付いてない。
街中の歩道は昼時で多くの人たちが往来している。

どうしても気になったのが老人の顔の色だった。
生気がなく白くなっていた。
よく見ると目をあけて口もあけている。
心配になった。
僕はその老人の男性に声をかけた反応がない。
肩をゆすった。
まったく反応がない。
思わず首もとの動脈に指を当てた。
体温が少し低いようだ。
脈がない。
今度は手首の脈を取ろうとした。
手はもう冷たくなっていた。
手首でも脈はなかった。
思わず目の瞳孔を見た開いている。
亡くなっている。
僕はあわてて先ほどの花屋に駆け込んで
救急車を頼んだ。
そしてその老人が亡くなっていることを告げた。

老人のそばに戻り、老人の着物がはだけているので直した。
見開いている目を閉じてあげた。

花屋に戻り何か掛けるものがないか聞いたが、
花屋には花を包むものしかなかったが、
店の女主人はお隣から毛布を借りてきてくれたので
女主人と一緒に毛布を老人に掛けた。
僕はそこに立ちすくんでいた。
そこにおでん屋の経営者が自転車に乗り通りかかったので
呼び止めてしばらくは僕のそばにいてもらった。

しばらくして救急車がバス停の前に止まり何人もの
救急隊員がなくなった老人を囲んだ。
花屋さんがどう伝えたのか消防車まで来た。
7人ほどの隊員が呼吸用のポンプや脈拍計を
取り付けたりとか忙しそうに動いていた。
救急隊員はバス停前の喫茶店や花屋で聞き
込みをしていた。
仕事そっちのけなので、とりあえず僕は
役目を済ませたということでその場を立ち去った。

しばらくいくと救急隊員の一人が僕を追いかけてきた、
連絡先を聞かれたので名刺を渡し仏さんのことを頼み
仕事に向かった。

もう少し早くバス停の前を歩いていたら、
助けられただろうか。
救急隊員もそのことを悔やんでいた。
でも人はいつどこかで必ず死ぬもの。
この老人もこの町を見て亡くなりたかった
のかもしれない。


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コメント 4

マルボロ

 最近グリーンゴブリンという名前を使わなくなったな・・・
 まあいいや、これも時代の流れだ。
 カヌーですか、うらやましいです。
 私はまあ夏のキャノンボールが終わって、年末恒例の実家への参勤交代の準備に入っております。
 来年こそはスカイダイビングをやりたいものだと燃えております。
by マルボロ (2005-11-08 14:11) 

村民サーフカヤッカー

インストラクターと川のガイドの仕事ですので、
遊びというより仕事として真剣に取り組んでます。
そして事故が起きないよう心がけてます。
初めて川でカヌーをする人に心から川に親しんでもらい、
理解してもらいたいと考えてます。
平日東京での仕事をして、週末カヤックをする生活を
ほぼ半年休まずしました。
これだけさせてくれた家族に感謝してます。
by 村民サーフカヤッカー (2005-11-08 14:34) 

ロードカオス

おひさしぶりです
カヌーをやられるのですね すごいです
そういえば某湖を登山で訪れたときカヌーを作ってる小屋(店?)
がありましたが。
カヌーはむずかしいでしょうか?
わたしはボート漕ぎすらやったことないですけど
by ロードカオス (2005-11-09 14:44) 

村民サーフカヤッカー

ダム湖のことですね。
以前はプレハブでしたがいまは鉄筋のすばらしい
建物ができてます。
那珂川は初心者でも下ることのできる川です。
スクールがありますので練習してから川くだりをします。
ただし、最初は安全のためにガイドが必要です。
川の流れにあわせてガイドが誘導する必要があります。
とはいっても9月には、5歳の男の子が下りました。
たぶん最年少だと思います。
by 村民サーフカヤッカー (2005-11-09 16:36) 

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